4月下旬の晴れた日曜日。菊池市泗水町を見渡す高台で、乳牛を飼育している中村雅貴さん(27歳)は、牧草の刈り取りに大忙し。牛乳が大好きな杉本さん一家が、花壇に囲まれた中村さんの牧場を訪ねました。
天井が高く、そうじが行き届いた牛舎では、整然と並んだホルスタインが出迎えてくれました。サイレージ(粗飼料)をゆっくり食べる乳牛たちの向かいには、生後1カ月ほどの子牛の姿も。「この子牛は何を食べるんですか」という杉本正樹さん(38歳)の質問に、「生後1週間は母牛の初乳を飲ませますが、後は粉ミルクを与えています」と、中村雅貴さん。「大きくてちょっと怖い」「顔が僕の体くらいありそう」と杉本実奈美(みなみ)ちゃん(8歳)と聖堅(まさたか)くん(7歳)は、25メートルほどもある長い通路を行ったり来たり。
中村さんの牧場では、現在42頭の成牛と、育成牛(2歳ぐらいまでの子牛)30頭を両親と3人で飼育。1頭につき1日約25リットルの牛乳を搾乳し、牧場全体では約1100リットルの牛乳をしぼっています。
牧場で飼育されている子牛はすべて人工授精で生まれたもの。子牛は2歳まで育成舎で育ち、繁殖期を迎えた後はこの牛舎で7〜8歳まで妊娠と出産を繰り返します。正樹さんは「乳牛にミルクを出させるために子牛を産ませてるんですね。子牛のための牛乳を人間がもらっているわけか…」と、少し複雑な表情です。
また、生き物を扱う以上、365日世話は欠かせません。毎日朝夕2回、必ず搾乳と掃除、エサやりを行わなければならないため、以前は冠婚葬祭への出席もままならなかったとか。「私が経営に加わってからは、交代で休む余裕もできました。今後は管理が行き届く範囲でより安心なnon‐GMO牛乳を生産して、他の牧場との差別化を図りたいと考えています」と、中村さんはきっぱり。
non‐GMO牛乳とは、遺伝子組み換え作物を一切与えずに育てた乳牛から搾った牛乳のこと。消費者に安全・安心な牛乳を提供しようと、10年前からグリーンコープがJA菊池とらくのうマザーズの協力を得て行っている取り組みです。繁殖・搾乳段階ともに、非遺伝子組み換え作物を使った飼料を与えることが義務づけられています。加えて中村さんの牧場では、隣接する600アールの畑で牛フンを肥料としてリサイクルさせながら牧草やトウモロコシを栽培。これを飼料として与えることで、外国産の飼料に頼らず、さらに安心の度合いを高めています。
さて、牛舎では夕方の搾乳の時間。実奈美ちゃんと聖堅くんは、エサやりに続いて搾乳もお手伝いさせてもらうことに。自分でしぼった牛乳をおそるおそる飲んだ実奈美ちゃんは「おいしい!」と満面の笑顔です。そのかたわらで、「人間が牛のお世話をするから、おいしい牛乳を出してくれるんだよ」と聖堅くん。雅子さん(33歳)は「安全な飼料を食べた牛の牛乳だから、安心して飲めるんですね。これからは“何を食べているか”も牛乳を選ぶ基準になりそうです」と話してくれました。
取材後、足早に牛舎に戻り、黙々と世話を続けていた中村さん親子の姿が印象的でした。 |
 |
| 実奈美ちゃんと聖堅くんは乳しぼりに挑戦。「乳首をしっかり持ち、牛乳が上に逃げないようにね」と中村さん |
 |
| 風通しのいい牛舎の中はひんやり。「牛が食欲を失わないよう、温度管理も大切」と中村さん |
 |
| 雅貴さんのお母さん、つる子さん(50歳)手作りの牛乳ゼリーと牛乳豆腐 |
 |
| やんちゃな聖堅くんも、中村さんに誘われると一生懸命お手伝い。中村さんの牧場では、消費者を受け入れて酪農体験などの交流もさかんです |
|